29.鬼太郎大全集を読む

鬼太郎大全集読んだ。
水木しげるといえば世間的には「ゲゲゲの鬼太郎」というイメージで定着してると思うけど、私は今まで水木しげる作品は戦記物しか読んだことがなかった。「総員玉砕せよ! 」とか、「水木しげるのラバウル戦記」とか、坂口安吾と並んでことあるごとに読む作品。

今回は「鬼太郎大全集」を読んだ。
水木しげるが描く、戦後特有の不潔さがとても好み。戦記物の作品はもっと悲惨で、グロテスクな表現も細かくされていたのに対して鬼太郎作品はいくらかデフォルメされていた。鬼太郎が妖怪でほとんど不死だから、「死ぬ」という表現を衝撃的に描く必要がないからかな。
鬼太郎目玉おやじの出生とか(目玉おやじ鬼太郎の本当のお父さんの一部だということを初めて知った。常識なのかな?)、ねずみ小僧のふらふらした立ち位置とか、全体的に荒んでいて、当時の日本の風俗が垣間見えておもしろかった。

漫画自体は、古い作品を再編纂したものだから、つじつまが合わなかったり同じような作品がいくつか収録されていたりした。調べてみると、当時は漫画を描いては色々な雑誌に手当り次第に投稿しなくては生活できないような時代だったらしくて、作品が散り散りだったそう。なので、連載ものとして読むより、短編として読んだ方が楽しめると思う。

鬼太郎はその日暮らしでふらふら街を散歩してはたばこをふかして呑気に生活しているけど、地位も名誉もある人からよく頼られる。総理大臣が街中鬼太郎を探して「鬼太郎さん!お助けください!」とたびたび登場するのにはシュールさを感じておもしろい。鬼太郎が悪い妖怪のせいでなにかの病気にかかったときも、目玉おやじが普通に街の診療所に出向いては医者を呼ぶし、誰もツッこむ人がいない作品。

妖怪が生きるのは大変だ!