長文を書くのは苦手だ。連載なら書き終えられるかもしれない。

 ぼくが八歳のときに撤去されたジャングルジムを十年経った今でも夢に見る。心臓が騒がしくて眼を覚ますと四隅が濁るどろりと暗い部屋がぼくごと包んでいるので安心するのだった。いつものぼく、いつものぼくの部屋で重たい布団に寝返りさえ打てない日常。手を伸ばして触れる夜は丸くて温かい日もあれば鋭くてひんやりと沈み込む日もあった。丸い夜の日は仰向けで眠ると悪い夢を見なかった。反対に、鋭角的な夜の日はうつぶせで眠るのが良いらしかった、これは最近気付いたことだ、鋭角的な夜でも、触れてみて温かかったら、うつぶせで眠らなくても良いというのは昨日知ったことだった。ただしこんな夜はめったにない。これだけでも彼に教えてあげることができれば彼は笑ってくれるだろうかと思ったのだけど、彼はそれでも薄い唇をまっすぐ閉じたまま星を見ていた。ぼくは戦争映画を再生しなければならなかった、返却日は明日だったから。